物損について
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物損事故として報告することの問題点

交通事故についてご相談にいらっしゃった方からよくご質問を受ける事項として,「人身事故」と「物損事故」の違いという点があります。

内容としましては,「相手に物損事故ということで報告しましょうと言われた」,「物損事故で処理してしまったが良かったのか」などという感じです。

みなさんは「人身事故」と「物損事故」がどう違うかご存知でしょうか?

端的に違いを申し上げれば,以下のとおりになります。

「人身事故」では刑事処分や行政処分(免許停止等)を受けることがある。

「物損事故」それ自体では刑事処分や行政処分を受けない

「人身事故」の場合,加害運転者には自らの不注意な運転により人に怪我をさせてしまったということで,「自動車運転過失致傷罪」という犯罪が成立します。

そのため被害者の怪我が重たい場合や,過失の内容が悪質な場合(無免許や赤信号無視など)などには,罰金刑を科されたり,場合によっては懲役刑を科されることもありえます。(もっとも,何度も人身事故を起こしているような人でなければ,被害がさほど大きくない事案では刑罰を科されない形で事件処理が終わることが多いです。)

また,「人身事故」の場合は行政処分の対象にもなります。
これは端的にいえば免許の点数を引かれて,場合によっては免許停止や免許取消しという事態もありうるということです。

以上に対して「物損事故」の場合は,それ自体では刑事処分も行政処分も科されることはありません。
違反点数の加算がないので,ゴールド免許を持っている方が「物損事故」を起こしても,「物損事故」それ自体では,ゴールド免許に影響しないということです。
「物損事故」それ自体ではと繰り返し記載しているのは,無免許で物損事故を起こした場合や酒気帯び状態で物損事故を起こした場合には,当然に道交法違反となり処罰の対象になることがあるためです。

特に,気をつけて頂きたいのは,報告義務違反いわゆる「当て逃げ」です。
運転者は,たとえ物損事故を起こした場合であっても警察官に「交通事故が発生した日時及び場所,当該交通事故における…損壊した物及びその損壊の程度」等を報告する義務を負います(道交法72条1項後段)。
この報告を怠った場合,「三月以下の懲役又は五万円以下の罰金」がかせられる可能性があります(道交法119条10号)。

なお,「物損事故」でも,壊したものに対する損害賠償義務は発生します。
もっとも、「物損事故」の場合,自賠責保険は利用できません。
損害賠償は任意保険で支払うか,加入していない場合には自腹で払う必要があります。

 

人身事故は刑事事件となりえます。そのため警察において事故状況に関する詳細な資料を作成します。事故当事者や目撃者から事情聴取を行うなどして、証拠を確保するための活動を行います。これらの証拠は「実況見分調書」や「供述調書」という形で書類化されていきます。そして証拠のうち一部については、事後に被害者がその写しを取得することも可能とされています。

事故の発生について双方に一定の責任があると思われるようなケースにおいては,しばしばどちらがどのくらいの割合で責任を負うか(いわゆる「過失割合」をどうするか)という点で争いが生じます。この時に上記の実況見分調書など,警察によって作成された証拠があると,それを有利な材料として用いることで、事件の解決に向けた交渉を有利に進めることができることもあります。

これに対して「物損事故」の場合,「物損事故」自体は犯罪でないことから、犯罪に対する捜査機関である警察は,特に事故に関する詳細な資料を作成することはありません。

そのため物損事故の場合は,しばしば当事者自身の認識以外に何ら事故の発生原因を特定する材料がなく,過失割合について交渉が難航するということがあります。

相談時,「怪我がそんなに重たくはなかったし,事故直後にちゃんと加害者が謝ってくれたから免許の点数を引かれるのもかわいそうだと思って,人身事故して届出はしていません」いうような話を聞くことがあります。

物損事故として報告して,後に不利益を被った例を紹介します。

一つ目は先ほど挙げたものですが,物件損害として処理をしたら,後に過失割合が争いになったというものです。

タクシーやトラックなど業務として車の運転をしているドライバーにとっては,人身事故扱いになるかどうかは生活に直結する問題であるため,「物損での報告」を求められることが多いです。

かわいそうに思って物損扱いで報告をしましたが,後に過失割合が争われたというケースは比較的多い印象です。

理屈はこうです。職業ドライバーは「100%責任を負う」といわれて物損扱いで報告しました。ところが賠償段階になり,保険会社と示談に向けた話し合いに入った時点で,被害者側の過失を指摘されて,賠償額の減額を主張されました。

これは保険会社のシステムの問題です。保険会社としても加害者(保険契約者)の意向をある程度踏まえて示談交渉を行うことが多いと思いますが,それにも限界があり,被害者に過失が存在する事案にもかかわらず,加害者の過失を1000%と認めることができないケースというものが必ず出てきます。

もう一つは,過失割合が9:1という事案でした。

当初物損扱いで報告していたところ,後に加害者(過失割合が大きい当事者)が,人身扱いに切り替えてきたということがありました。

この場合、まずどのような問題があるかみていきましょう。

民事的な責任は9:1となります。

ところが刑事事件では,「人が怪我をしたのか。」ということを中心に考えます。

結果どうなったかというと,被害者(過失割合が少ない当事者)が,警察から調べを受けることになりました。

警察に行って事後的に人身事故扱いに切替るということは可能です。その場合には実況見分調書が作成されます。

しかし,警察は交通事故から数ヶ月後の切替にはなかなか応じないことがありますし,事故から数ヶ月後に実況見分をやっても正確な事故状況の再現は難しいという問題があります。現実的な問題として,トラブルになった後に供述調書を作成しても,お互いの言い分は対立していることが多いです。

山形の,交通事故による人身事故で悩んだら,天童法律事務所までお気軽にご相談ください。